映画のワンシーン。別に恋愛がメインの映画じゃなくて、ほんの少し、エッセンスのように垂らされた甘さの欠片。手を繋ぐ、それだけのラブシーンなんて言えないくらいのささやかな物。
でも。あまりにも空気がピンク色というか、幸せそうで少し恥ずかしくなって、画面から目をそらす。同じタイミングで逸らしたのか、ぱちりとジャッカルさんと目があった。それが嬉しくて、幸せで、ついえへへと笑うと困ったようにあちらも笑った。



てくてくと、夕日の中を歩く。映画を見て、お茶をして、本当に夢を見てるみたいに幸せな時間は瞬く間にすぎて行く。危ないから駅まで送ってくれるということで、本当は迎えの車が来ていたことを内緒にした。次いつ会えるかも分からないので、これくらいのずるっこは神様も許してくれると思う。

「ブンちゃんとは本当にただの友達なんだけど、よく勘違いされるんだよ!」

ブン太と付き合ってるならこういう風に出掛けていいのかというジャッカルさんの質問に困ったように答えると、勘違いしてて悪かったと謝られた。うむ、好きなひとにされる誤解として最上級にそれは嫌なのでほっとする。どうやって次の約束を取り付けるか頭を悩ませながらの会話。同い年なのに敬語はおかしいということで、タメ口になった分の距離感は縮んだ気がするけれど、ふたりきりで遊ぶには流石にまだ遠い。ブンちゃんにまた頼むしかないかなぁ。

「でもはブン太の好みだとは思うぜ?」
「えー?そっかな、ブンちゃんは私を妹みたいとか言ってたよ?私もブンちゃんみたいなお兄ちゃんがよかったし!」

兄の顔を思い浮かべたさいで思いっきり顔をしかめて、気をとりなおしてまた笑う。

「それにブンちゃんの好みはね、たしか手を繋ごうとして落とし穴掘るような子だって言ってた!」
「いや、どういう意味だそれ?」
「えーとね?手相見てあげる、とかでもいいらしんだけど、本当にしたいことのためにちょっと回りくどいところがいいんだって。そういうことしても許してもらえるって気でいるずるいとことか」

後、上目使いとかそういう無意識で自分が可愛いって知ってる仕草とかもいいらしい。そこらへんはよく分からない。

「私は手を繋ぎたかったら、多分そのまま言うもん!直球しかないからたまに頭痛くなるとか言われるし」
「いやでも、そっちの方が俺はいいと思うぜ?言ってくれないと分からねーし」
「そっかぁ、ならよかった!」

ニコニコと笑っていたら何故か頭を撫でられて、余計にだらしない笑顔になる。嬉しい。うれしい。

「じゃあ、直球というか、そのままいうね。今日本当に楽しかったから、また遊びに行こうね!」
「おー、こちらこそ。女子楽しませるとかそういうの得意じゃないんだけど、そこまで喜んでくれるとこっちも嬉しいな。また予定あったら誘う」
「わーい、楽しみにしてる!私も何か楽しそうなことがあったら誘うね!」

飛び跳ねそうになるくらい嬉しくて、声が弾む。私だけがたのしかったんじゃないことが余計に嬉しい。次の約束を、できるとか本当にゆめみたいで。ブンちゃんには次はちょっと豪勢なのを作ろうと決意する。

「じゃあ、またな」
「うん、またね!えっと、お誘い以外でも、メールしてもいいかな?」
「いや。いちいち許可はいらねーだろ」

くすりと笑うジャッカルくんに顔が赤くなる。少し暗くなったから、分からないって信じたいのと、少しくらいは好きだって気持ちが伝わるといいなって気持ちが混ざる。それをごまかすようにして手を振った。

(長い間にかかるのを待っている)
――そんなのよりは、迎えにいくわ!


2013/11/22 三明